Ghostwire: Tokyo

短くて心に残るいいゲームだった。

移動ストレスの少ないオープンワールド

  • 群衆がいない (人にぶつからない)
  • 身体能力が高い (飛び降りても死なない)
  • 目的地が近い (サブクエ回収が早い)

序盤から高所に一瞬で飛べる能力と数秒間グライド出来る能力があり、落下ダメージ(ペナルティ)の概念が無い。

どれほど美しいオープンワールドでも人間の足の弱さを再現されると面倒臭さが勝る。山や壁の上り下り、馬や車の乗り降り、ダッシュのスタミナ制、サブクエで地上を長距離移動、崖や建物から少しずつ降りるポイントを探す、あの苦行。

渋谷を再現したマップでは大抵の目的地はファストトラベル地点から数十mで、それも手近なビルの屋上からグライドして数秒で辿り着く。通行人に衝突して文句を言われる事もない。サイドミッションは同時進行可能で気軽に回収出来る。

人はいないが移動が面倒な大自然、ポイントは密集しているが群衆が邪魔な市街地の良い所取り、それが突然無人と化した市街地。素晴らしい解決策。
他のゲームでも群衆オフモードを実装して欲しい。

高密度で体験的な背景

群衆という無駄なSkinnedMeshが無い分背景の密度が高く、邪魔も入らず、どこを撮っても絵になる。同じGPUでも他作品より美しい映像を処理出来る。

単なるオブジェクトのランダム散布ではなく物語性があり、サイドミッションで一度入るだけの家の中まで異様に作り込まれている。怪異の演出もホラーというよりアート的で、雑魚戦の妨害もなく存分に観察出来る。

残念ながら撮影モードは貧相で、被写界深度、比率、フィルタ濃度、天候、エフェクト追加などの項目は無い。自撮りモードにしないとカメラ移動も出来ず、一時停止出来ないので撮影中に画が変わる。ツシマのような戦闘中のカットは不可能。
→アップデートで撮影機能が強化され、被写界深度等が追加された。

フィルタは強すぎてほとんど実用的ではなく、デフォルトの自撮りエモートも雰囲気にそぐわない。ゲーム後半まで満足行く自撮りは難しい。
ビジュアル重視のゲームなのに不可解であり勿体ない。

主人公と人外だけの世界

マップ上にいるのは動物、妖怪、霊のみ。移動中に方々からステレオタイプな人間の音声を聞かされる事が無い。サイドミッションは主に霊からの相談で解決後に成仏してゆくので、興味のないサブキャラのストーリーに延々と付き合わされる事も無い。

中でもコンビニや屋台で商売している猫又の可愛さ。収集家の猫又はそれぞれ好みがあり、見付けた収集品を渡すと早速それを身に着けたり飾ったりして喜んでくれる。

主人公の設定自体は典型的な心優しき若者だが、妙に艶めかしい手、アイドルのごときエモート、最高難易度のクリア報酬がミニスカ巫女服など特殊な扱いを感じる。
大勢のサブキャラは不要、主人公だけいればいいタイプの需要を満たす。(満たされた)

薄味だが終わり方が素晴らしいシナリオ

探索は楽しいがメインストーリーは空気に等しい。これまで一万回見たような、芝居がかった謎の男が世界をどうこうしようとし、少女が巻き込まれ、主人公が阻止しようと駆け付けるが結局毎回間に合わない。熱い絶叫。少女の不思議な力。古より続くJRPGのそれ。

が、最後の始末の付け方が非常に良かった。無人の渋谷というアート作品に終わらず、物語が終わる事で心に小さい傷を一生残すような理想的なラスト。近年だとFF15やツシマのような、SFC後期RPGを思わせる定められた喪失の物語。

長寿シリーズ・続編・リメイク・リブート作品だらけの中、新作を生み出し、キャラ商売でダラダラ続けず潔く終わらせる。目新しさや搾取ではなく人の心に残る作品を作る意思を感じた。

致命的な低FOV固定、強制エフェクト (PC版の対策)

このゲームの致命的な点として、低FOVから変更出来ない。更に常時視界に色収差とフィルムグレインがかかり、6月末のアップデートまで無効化出来ない状態だった。更に無効化は出来るものの「移動時のカメラ振動」という悪しき遺物、また視点操作にも強く慣性とデッドゾーンが設定されており、デフォルト状態ではまともにプレイ出来ない。初回はカメラ振動を切っても1時間で酔って寝込んだ。外部ツールでFOVを拡張し、色収差等を無効化、カメラを最大まで機敏にして長時間プレイ出来るようになった。

FOV変更ツール Flawless Widescreen
インストール後リストからゲームタイトルを選択、FOVを調整してゲームを起動する。

Modが使えないPS5版は現在も低FOVでプレイするしかない。アプデ前まで色収差無効化もPC版のみModで可能だった。Twitterで「Ghostwire 酔う」で検索すると多くの嘆きが見付かる。ゲーミングPCを所持し知識があるユーザか、強靱な三半規管を持つ者しか快適にプレイ出来ない。少しでも酔う可能性があるならPC版の購入を勧める。

色収差やフィルムグレインは静止画や一時的な演出の為のものであり、移動中の視界に常時ついてくるのはただの眼病だ。エフェクトは視界ではなく撮影モードの方に実装し、撮影モードにあるFOV設定をプレイモードにも実装して欲しい。