老人のゴミへの執着

老人が腐った物を捨てない、汚い物を使いたがる、物を溜め込む事は長らく「戦後に物が無くて苦労した世代だから仕方ない」と慮られてきたが、時代が進み、物が潤沢だった世代が老いてもやはり物に執着しゴミ屋敷を作り出す事で、経験は関係なく脳の問題だと明白になった。

かつて老親のタッパーを批判していた子も、自身が同年代になると突然汚い物を好みだす。悪臭を放つスポンジやカビの生えたタオルを「これじゃないと駄目なんだ」と抱えて離さず、捨てようとすると激怒する。そして病気になるか死んでから結局子世代にゴミの山を処分させる。

あれらは本気で「物が勿体ない」と考えているのではない。自分の使っている物がいい物だという自分の経験や判断への固執、自分が古く汚くなっていく事で湧く古く汚い物への愛着。それらが否定され捨てられる事を自分に対する否定だと感じる認知。

老いると誰もがおかしくなる。必要なのは理由を考え出して「仕方ない」と甘やかす事ではなく、現象としてそうなる事、気を遣わず対処していい事を周知する事だ。